魔法のマーメイドクラブ
「さあ、みんな静かにしてね。ご家庭の事情でこんな時間になってしまいましたが、これから三組に新しい友達がやってきます」

　どうぞの掛け声で入ってきたのは、ハチミツみたいな髪をふわっとさせて、星を散りばめたような瞳をした女の子。

「海屋敷アクア　ダヨ！　この町ニハ、運命の人を探しに来たんダ〜！　みんな、よっろしくネ〜」

　鼻にそばかすがあって、アニメっぽい声で自己紹介をしている。

　運命の人……？
　ちょっと、ううん、だいぶ不思議な子だ。

　それでも、その子がとても可愛いことは分かる。例えるなら、童話の中のお姫様みたい。
　真っ白な肌に、ほんのり桃色のほっぺとくちびるで、アクアちゃんがエヘッと笑った。

「しばらくの間、知り合いのおばさんの家でホームステイするカラ、仲良くしてネ〜」

　太陽のような明るさに、教室の空気が置いていかれている。みんなポカンと見ている。
　すごいなぁ。自分の世界があるって、こんな子のことを言うのかな。

　休み時間には、アクアちゃんの席には人だかりができていて、すぐに人気者になっていた。
　わたしも話してみたかったけど、その輪に入る勇気はなかった。
< 4 / 85 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop