魔法のマーメイドクラブ
「ミイちゃんもカナトも、だーいスキ!」

 いきなり、後ろから抱きつかれてびっくりする。
 三人の顔が近くて、また赤くなるけど、楽しい。引っかかっていたモヤモヤが、嘘みたいにスーッと消えていった。

「で、ミイはどうした?」
「え?」
「願いごと」

 そうだと思い出して、わたしは小さく息をはく。


『臨海学校で最後まで泳いで、ゴールにつなげますように』


 ドキドキしながら、となりに短冊をつるした。

「ウンウン、ミイちゃんなら、ぜったい叶うヨ!」

 フレーフレーと、アクアちゃんが手を上げて。

「がんばれ」

 そうニッと白い歯を見せるカナトくん。こんな風に、人懐っこく笑ってくれる姿は珍しい。
 クラスではクール男子として人気だけど、ちょっぴりマニアックなところもあったり。チームアクアでいるときは、ありのままのカナトくんを知れた気になる。

「あ、これあげる。海のお守り……みたいな?」
「えっ、ありがとう」
「たまたま、売ってるの見つけたから。大した効果ないかもしれないけど」
「ううん、嬉しい……すごく。大事にするね」

 手のひらに乗るほどの小さなキーホルダー。水色と白の石がついていてキレイ。パワーストーンみたい。
 アクアちゃんは鼻歌を歌いながら、笹を飾っている。こっちに気づいていないみたい。

「ミイのしかないから、内緒な。アクアは人魚だから、守られてるだろ。さっき代わりのお菓子あげたし」

 小さくうなずいて、下を向く。
 どうしよう。今、すごく気持ち悪い顔してる気がする。こんなの嬉しすぎて、赤い顔もドキドキなニヤケも隠せないよ。

 カナトくんとの秘密が、ひとつ増えた。
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