魔法のマーメイドクラブ
「父に頼んで、秘密基地の近くを撮っていたデータを借りられたんだ」

 リュックからノートパソコンを取り出すと、手慣れた様子でカチカチと操作を始めた。
 ……すごい。指の動きが早くて、なにをしているのかさっぱりだ。

「カナトの家って、お偉いサンなの? パパ、ビッグメンなの?」
「そうかも……しれないね」

 カナトくんをはさんで、アクアちゃんと会話する。
 この前、授業でタイピングの練習があったけど、一番早かったのを思い出した。
 なんでも完璧にできちゃうんだなぁ。チームアクアで距離が近くなったから、すごい人だってこと、忘れかけていた。

「祖父が知り合いだったから、口を聞いてもらったんだ。六月三十日の映像は……」

 わたしなんかでは、全然手の届かないところにいる人。
 ピコンと音がして、みんなで画面をのぞき込む。
 そこには、草原(くさはら)にある秘密基地の前の道が映っていた。人通りの少ないところに、誰か立っている。
 はっきり顔は見えないけど、この水色のランドセルとデニムのワンピースは……。


「おっ、リムちゃんダネ〜」

 間違いない。りっちゃんの着ている服と一緒だ。
 少しして、人影は画面からいなくなった。秘密基地のある草原の方から戻ってきて、りっちゃんは帰って行った。

 どうして?
 胸の奥がズキズキして、苦しい。
 秘密基地の場所を知っていたことも不思議だったけど、行ってないってあの言葉は嘘だったんだ。

「壊されたところは映ってないから、これだけで判断は、できないけど」

 限りなく黒に近い。カナトくんも、アクアちゃんもそう思ったはず。口に出しては、言わなかったけど。

「俺たちの宝物を壊したヤツは、許せない」
「そうダ、そうダ!」

 バラバラになった貝殻と石。くしゃくしゃの絵が、テーブルの上でさみしそうにしている。
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