魔法のマーメイドクラブ
『モノ、ワカル。キオク、モッテル』

 とつぜん聞こえた声に、キョロキョロとまわりを見渡す。

「どうかした?」

 カナトくんは聞こえていないのか、首をかしげている。

「出てくるの〜? イイヨ」

 アクアちゃんの触角みたいに跳ねた髪が、ウニョウニョと動き出して。スライムみたいなものが、ポコンッと生まれた。

「な、なんだこれ!」

 驚くカナトくんの前で、クリオネの形になったパトラが、パタパタと飛んでいる。
 久しぶりに見たけど、やっぱり不思議。カナトくんは初めてだろうから、びっくりするのは仕方ないよね。

「なんだ……この生物」
「アクアちゃんの、友だちなんだって」
「……このウサギゴケの花みたいなのが?」

 ウサギゴケがどんな花か知らないけど、カナトくんには花に見えたらしい。わたしは、クリオネだと思っていた。

『カイガラ、イシ、エ、シラベル。マーマジョ、ワカルハズ』

 相変わらずの片言でしゃべっている。

「調べる……?」
「そっか! おばさんナラ、記憶を引き出す魔法知ってるカモ!」

 パンッと手をならして、アクアちゃんが小さくジャンプした。
 マーマジョって、波木さんのこと?

「えっ、今の鳴き声で言葉理解したの? ミイ、すごいな」
「……え?」

 首をかしげながら、カナトくんはわかんねぇとつぶやいている。
 そっか。カナトくんには、パトラの言葉がピーピーと聞こえているんだ。前のわたしみたいに。

 そういえば、今日は【ペラペライヤホン】を使っていない。わたし、どうしてわかったんだろう。

 壊れた宝物は、アクアちゃんの家で預かってもらうことになった。波木さんに事情を説明したら、少しの間、貸してほしいと頼まれたの。

 もしかしたら、物の記憶を見てくれるのかもしれない。
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