魔法のマーメイドクラブ
「いつ見ても不思議だな」
「ほんとだね」
「フィクションの中でしかないと思ってたことが、現実で起こってるんだから。人生、なにがあるかわかんないよな」

 しゃがんで、カナトくんが水をすくう。手のひらの水が、さらさらと落ちていく。
 このプールは普通の水じゃない。すぐ乾いて、なくなってしまうの。

「そうだよね。叶うわけないって、決めつけてたことも、もしかしたら、叶う日が来るかもって……思えるよね」

 となりに座りながら、ハッとする。
 変なこと言ってなかったかな? 全然、話がかみ合ってなかったような……どうしよう。
 少し沈黙が流れたから、ヒヤヒヤした。
 何言ってんだコイツって、カナトくんにあきられたかもしれない。

「俺、魔法使いになりたかったんだ。結構、最近まで思ってて。ローナの世界は、この地球上のどこかに絶対あるって、信じてた」
「わ、わたしも! 夢見たことあるよ。二年生のとき」

 思わず、反応してしまった。
 カナトくんの声がとても真剣に聞こえて、気づいたら。

「わたしの場合は……、ヒロイン戦士の影響なんだけど」

 だんだん、声が小さくなっていく。
 マーメイド戦士の少し前に、魔法戦士がやっていたの。その子たちも、魔法でみんなを守っていた。
 好きだったこと、誰かに言うつもりはなかったのに。つい、打ち明けてしまった。
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