魔法のマーメイドクラブ
 臨海学校当日。一時間ほどバスに揺られて、海へやってきた。
 にぎやかな雰囲気の中、わたしだけが緊張しているみたい。
 先生が班ごとのメンバー表を配る。わたしは、三班。マナちゃんと、りっちゃんも一緒だ。
 空気がピリピリしていて、とても気まずい。
 緊張が最高マックスになってきた。足を引っ張らないようにしないと。

 アクアちゃんは二班で、カナトくんは四班か。二人と離れちゃったなぁ。
 となり列のカナトくんと目が合って、ニッと笑ってくれる。口をパクパクと動かしているけど、なんだろう?

『が・ん・ば・れ』

 まわりには気づかれないように、応援をくれた。嬉しくて、勇気がみなぎってくる。

『カ・ナ・ト・く・ん・も』

 今回は敵同士だけど、練習に付き合ってくれた二人のためにも、いい結果を出したい。

「美波ちゃん、泳げない人はアレ使っていいらしいよ」

 マナちゃんが、浮き輪を渡してきた。
 いくつか準備してあるのか、先生の腕にあとふたつ浮き輪がついている。
 まわりの子たちが、それを見てクスクスと笑い始めた。別の話で笑っているだけかもしれないけど、わたしには自分がバカにされているように思えちゃったの。
 借りている子は、他にいない。恥ずかしい。いやだな。

「……ありがとう。大丈夫」

 断ったら、一瞬、マナちゃんは驚いたように目をまるめて。

「え、ほんとに? 美波ちゃんって、泳げないんだと思ってた。一位目指して、頑張ろうね!」

 グッとファイトポーズをしたら、後ろのりっちゃんにはフンッとして、マナちゃんは前を向いた。
 たった今、自ら穴に落ちた気がする。これでもう、『参加することに意味がある』じゃなくなっちゃった!
 三班が勝つために、泳がないといけない。どうしよう。
 そして、後ろからとっても重い空気が伝わってくる。二人と同じ班は、とても気まずい。

「が、がんばろうね」

 ふり向いて、小さく声をかけた。りっちゃんは、無表情のまま。

「せいぜい溺れないようにね」

 ツンとした態度で、そっぽを向かれてしまった。
 わたしって、やっぱり嫌われてるのかな。
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