魔法のマーメイドクラブ
「霧谷くんって、最近、美波ちゃんと仲良いよね。好きなの?」

 りっちゃんの席へ目を向けてから、マナちゃんはもっと大きな声をだした。聞こえるように、わざとしているみたい。

「なんでそうなるんだよ」
「かばってるから」

 わたしは下を向いたから、カナトくんがどんな顔をしていたか分からない。
 好きなわけないじゃない。チームアクアの仲間だから、味方してくれただけだよ。
 それなのに、わたしは……。

「一生懸命、練習してたの知ってる。それに、花池さんはそんなズルしない」

 ズキンと、胸が張りさけそうな音がなる。
 信じてくれているカナトくんを、裏切っている。ここにいる、みんなのことも。

「私たち、別に責めてるわけじゃないよね? ただ、ほんとのこと知りたいだけだし」
「そうだよ。みんな頑張って、一位目指してたんだからね」

 知る権利はある。マナちゃんたちの言うことは、間違っていない。悪いのは、本当のことを言えなかったわたしだもん。

「ミイちゃんは、ちゃんと泳いでタヨ! アクア見てたモン! みんなも見てたデショ? ネッ、ミイちゃん?」

 うしろから、アクアちゃんに抱きしめられた。その力はギュッと強くて、でも優しい。
 アクアちゃんが泣いてる。わたしのために、悲しんでいる。

「……ごめん。みんな、ごめんなさい。黙ってて……ごめん」

 頭を下げたまま、つぶやいた。
 アクアちゃんの記憶が消えていて、よかった。そうじゃなかったら、たぶん、ありのまま話していたと思う。
 アクアちゃんの秘密を暴露して、わたしを守ろうとしてくれたに違いない。

「ほらぁ、やっぱり。ズルして一位になったんだ! だから言ったでしょ」
「花池さんって、そんなことする子だったんだね」
「でもどうやったの?」

 ざわざわと、教室中で話し声がわき上がる。あたり前だけど、悪い方ばかりのだ。
 もっと早く謝れていたら、こんなことには、ならなかったのかな。
< 71 / 85 >

この作品をシェア

pagetop