魔法のマーメイドクラブ
 おそるおそる顔を上げたら、カナトくんが黙ってこっちを見ていた。『幻滅した』って、顔に書いてある。
 これで、完全に嫌われちゃったよね。後まわしにしてきたんだから、自業自得だよ。

「うるさ」

 廊下の方から声がした。りっちゃんだ。
 群がっている方を見ることなく、プイッとした態度で教室を出て行った。

「なにアレ。こっち側にいたら、絶対悪口言ってるくせにね。うちら、べつに美波ちゃんのこと無視するつもりないし。アンタとは違いますけどー!」

 もうない背中へ向けて、マナちゃんがイーッと歯をむき出しにする。今まで見たことがないような、とても怖い顔だ。
 みんなをバラバラにしちゃったのは、わたしなのかもしれない。

「ンー、じゃあ、もっかいみんなで泳ごうヨ!」

 突拍子もないアクアちゃんのセリフに、一瞬、教室がシーンとなった。
 それぞれきょとんとした顔で、近くの人と目を合わせている。

「なに言い出すの? イヤだよ。せっかくの夏休みなのに」

 わけがわからないというように、マナちゃんは声をあらげた。

「でも、マナちゃんたち納得できないんだよネ〜? ミイちゃん謝ってるケド、まだ怒ってル」
「あたりまえでしょ。ズルして、嘘つかれたんだから」

 ねっ、と他の子たちとアイコンタクトをとって、マナちゃんが口をへの字に曲げる。

「アクアが、みんなのモヤモヤ解決してあげるヨ! ぜーったい、楽しくなるヨ!」

 張りつめていた教室が、少しずつやわらいでいく。
 マナちゃんは、それ以上なにも言わなかった。
 それから、気まずそうにして自分の席へ戻っていった。
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