魔法のマーメイドクラブ
 家へ帰ると、甘くていい匂いが玄関まで届いくる。お母さんが、カンちゃんとクッキーを焼いているんだ。

「おかえり〜、ミイちゃん。お昼食べたら、クッキーもあるからね」
「今日もすごいね。抹茶と、チョコ味?」
「そうだよ! カンちゃん、ハートと貝殻の型やったの。じょうず?」
「うん、かわいいね」

 ランドセルを置いて、ダイニングテーブルに並ぶクッキーを手に取る。
 デコペンやカラフルチョコがキラキラしていて、まぶしい。きっと、楽しく作ったんだってわかる。
 カンちゃんのまっすぐでキレイな目。ちょっとだけ、うらやましい。

「美波、どうかした? 元気ないね」

 クッキーをタッパーに入れながら、お母さんが心配そうにする。
 今日の朝も、あまり話さずに出てきちゃったの。学校やカナトくんたちといろいろあったこと、気づかれたくなくて。

 でも、お母さんとカンちゃんの顔を見たら、急に涙があふれてきた。

「……わたし、嫌われちゃった」
「なにがあったの?」
「ほんとのこと言えなくて、ずっとだましてた。信じて、かばってくれたのに……裏切っちゃったの」

 ぐすぐすと鼻をすすりながら、手のひらで目を隠す。
 わたしが嘘をついていたと知ったとき、カナトくんは怒っていた。口がへの字になって、まゆ毛が下がって……悲しそうだった。

「……そう。それで、今日は、ちゃんと謝れたの?」

 他のことはなにも聞かないで、お母さんはそれだけたずねる。
 小さくうなずくと、そっかと貝殻のクッキーをわたしへ渡した。

「頑張ったね。反省してるなら、きっと相手の子にも伝わってるはずだよ」

 ピンクのチョコで、Kと書いてある。カンナのアルフベッドだと思うけど、カナトくんを思い出す。

「でも、怒ってた。もう、しゃべってくれないかもしれない。どうしよう……」
「もしかしたら、その子もどうしたらいいのか、わからなかったのかもよ? 美波は、これからどうしたいの?」
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