魔法のマーメイドクラブ
「わたしは、仲良くいたい。また、一緒に遊びたい」

 極秘魔法クラブは、アクアちゃんがいる間だけの期間付きだけど最後まで続けたい。できることなら、中学生になっても、高校生になっても。
 アクアちゃんが天然なことを言って、わたしがあたふたとテンパって、カナトくんが静かに笑う。そんなチームアクアが、大好きだから。

「だったら、そう言わなくちゃね。言葉にしないと、伝わらないことばっかりよ? お母さんも、今の説明じゃあなんのことか全然わかってない」
「アハハ……そうだよね。ごめんなさい」

 となりでカンちゃんが、クッキーをパクリとかじる。おいしいと満面の笑みを浮かべて、食べてと手を押した。

「お姉ちゃん、仲直りしてね。ガンバレ!」
「ありがとう。明後日、ちゃんと頑張ってくるね」

 チョコクッキーは、ほろほろで、甘くて優しい味がした。


【返事できなくてごめん。スマホ没収されてた】

 その日の夜。久しぶりに、カナトくんからココアトークのメッセージがきた。
 驚きすぎて、スマホを二回落としちゃった。
 無視されていたわけじゃないと知って、安心したのと。あんなことがあったあとで、返事をしてくれて嬉しいのと。

【ううん。こっちこそ、いろいろごめんね。もう大丈夫なの?】

 部屋の中で、ドキドキしながら文字を打つ。
 一気に話しすぎると、うっとうしいかもしれないから、少しずつにしよう。
 小さく息を吸って、吐く。もしも、またカナトくんが困っているなら、アクアちゃんとウィングスニーカーで……。

【俺、チームアクアやめることにした】

 ピコンとホーム画面へ出た一行に、指が止まる。
 チームアクアを……やめる?
 ピコン。上に乗っかる文を、ゆっくりさわった。

【今までありがとう。楽しかった】

 この瞬間、ここだけ時間が止まったみたいに、息ができなかった。
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