魔法のマーメイドクラブ
 くるくると回転しながら、美しい尾びれをなびかせるアクアちゃん。ピョコンと顔をだして、わたしにピースをする。
 大成功ダネ♪
 そう口を動かして、また水中へ潜っていった。
 やっぱり、アクアちゃんはすごいな。バラバラだったクラスを、ひとつにしたんだもん。

「キャーーッ!!」

 そのとき、奥の方から叫び声が聞こえてきた。
 大きな波が現れて、ザブーンッと体が揺れる。

「な、なに?」

 プールが広くなりすぎて、遠くがはっきり見えない。プールのへりに掴まりながら、不安が押し寄せる。

「にげろーー! 早く、プールから出ろーー!」

 男子の必死な呼びかけに、ドクンと心臓が跳ね上がった。
 こっちへ向かって、みんなが泳いでくる。その背後に、グレーの大きな生き物が見えた。


 ーーシロナガスクジラだ!

 さっきまで、あんなのいなかったはず。どうして!

「ミイ! 飛べ!」

 いきなり体を持ち上げられて、ふわりと宙へ浮く。カナトくんが、投げたんだ。
 猫みたいに一回転して、プールサイドだった砂浜へ着地した。

「カナトくん!」
「誰か先生を呼んできて! ミイは、安全なところにいるんだ」

 それだけ言うと、カナトくんは水の中へ入っていく。

「待って!」

 そっちには……クジラが!
 カナトくんは、逃げるみんなと逆方向へ泳いでいる。
 プールサイドには、数人しか上がっていない。広すぎて、なかなか辿りつけないんだ。
 カナトくん……なにをするつもりなの?
 不安で、怖くて、どうしたらいいのかわからなくて。この場で動けないまま、わたしはただ涙を流しているだけ。
 助けを求めるクラスメイトを、見ていることしかできない。
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