魔法文具屋で、“わたし改革”はじめます!
「あなたの“気持ちの色”、くすんでるみたいね。
でも、ここなら大丈夫。自分の色、見つけられるよ」
「……気持ちの、色?」
ここねが聞き返すと、その人はやさしくうなずいた。
「そう。心のパレットは、毎日ちょっとずつ塗り替えられる。魔法文具が、ちょっと手助けしてくれるの」
お姉さんは、ガラスケースの中から、ふたつの文房具を取り出した。
「これは、“こころポストイット”と“ひだまりシール”」
「こころ…え?」
「“こころポストイット”は自分の本音が色で目に見えるふせん。……ほら」
そう言ってここねの胸元にふせんを貼る。
すると、元々真っ白だったふせんが、みるみる暗い青に染まっていく。
「え……なにこれ。色が変わった!」
「これがあなたの本音の色よ」
「わたしの本音……。この青は、どういう意味ですか?」
「疲れた、悲しい、現状が嫌だ、みたいに読み取れるわ。……合ってる?」
「……合ってます」
「そっか。じゃあこっちはどう?“ひだまりシール”。疲れた心に、そっと温かさを貼るアイテムよ」
まるで絆創膏みたいな、太陽のイラストが描かれた小さなシールだった。
触れるとほんのりあったかい。
「これはね、“今日のあなた”にしか使えないから、今この場で使ってごらん?」
わたしはおそるおそる、シールを胸に貼ってみた。
……その瞬間。
さっきまでずっしり重たかった心が、ふわっと軽くなった気がした。
窓からのぞく暗い空が、少し明るくなってさえ見えた。
「……すごい……!」
お姉さんはにこっと笑って言った。
「魔法は、心の中にあるのよ。
でも、ときどき忘れちゃうから、こうして“文房具の力”を借りるの。
……あなたも。
すこしずつ“わたし改革”、はじめてみない?」
“わたし改革”
なんて魅力的な言葉。
最近、「わたしなんて」と思ってしまうことが増えた。
そんな自分が嫌いで、変えたくて。
……もしかして、わたし、変われるかもしれない。
“改革”を起こしたい。
ここねはお姉さんの言葉にゆっくりとうなずいた。