魔法文具屋で、“わたし改革”はじめます!



「じゃあね、ちょっとお願いがあるの」





カウンターの奥から、きらりと光る小さな鍵を取り出した。
まるで月明かりでできているみたいな、不思議な銀色だった。





「えっ……?」

「明後日から1週間、わたしちょっと出張なの。だから、“パレット”の店番を、あなたにお願いできるかしら?」

「え、えええっ!? わたしが!? でも、なんでそんなこと……」





今日初めてお店に来て、初めて会ったのに。
どうしてわたしに?

お姉さんはわたしの目を見つめて、ゆっくりと言った。





「あなた、今ちょっとだけ“自分のこと、嫌いかも”って思ってるでしょ?」





図星すぎて、声が出なかった。





「でもね、そんなふうに自分をちゃんと見つめてる子って、ほんとはすごくやさしくて、強いの。
自分の強さに気づいてないだけ。
わたしはそういう子にこそ、“パレット”の魔法を伝えたいのよ」






お姉さんは、ふんわりと微笑んだ。





「誰かの心に寄り添えるのは、同じように迷ったことがある人だけ。誰にでもできることじゃないのよ?
きっと、誰にどんな商品が合うか、選ぶことができる」

「でも、自信ない、かもです……」

「自信なんてなくたっていい。むしろ、その“弱さ”があなたの“強さ”なんだから。
あなたはきっと、このお店に来る子たちの力になれる、“最強の魔法文具屋さん”になれるわ」





胸のあたりで、“ひだまりシール”がぽわんとあたたかくなる。
「あなたなら大丈夫」って、そっと言われた気がした。


……わたしなんかに、本当にできるの?

——いや。
「わたしなんか」って、また思ってる。


さっき、お姉さんが言ってくれた。
「魔法は、心の中にある」って。

だったら——ちょっとだけ、信じてみようかな。
わたしの中の魔法を。


誰かのために、自分の“弱さ”を使ってみたい。
そんなふうに思ったのは、たぶん初めてだった。





「……やってみたいです!」





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