魔法文具屋で、“わたし改革”はじめます!
6人目:つぼみえんぴつ
*
——チリンチリン。
「あれ? なんか、すごく静か」
鍵を開けて店に入った瞬間、ここねは小さくつぶやいた。
いつもなら、ペン立ての中から「おはよう!今日もバトルだ!」なんて声が飛んでくるし、カラフル付箋がぴょんぴょん跳ねて、床を紙吹雪みたいにしてくるのに——今日は、まるで誰もいないかのように、しんと静まりかえっていた。
「……みんな、どうしたの?」
戸惑いながらカウンターに近づくと、一通の封筒が置いてあった。
『ここねちゃんへ』
丁寧な文字を見ただけで、ここねはすぐに誰からか分かった。
店長さんからだ。
封を開け、さらさらとした筆記体のような字を目で追う。
『魔法文具屋パレットに、新たな魔法が宿るときが来ました。
その文房具に、どんな魔法を込めるのか——
それを決めるのは、ここねちゃん。』
「……え?」
思わず声が漏れる。
今までは、魔法がすでに込められた文房具を渡すだけだった。
それだって十分むずかしくて、毎回悩みながらだったのに。
「わたしが、魔法を決める……?」
重たくて、分不相応で。
そんなの、店長さんにしかできないって思ってた。
——でも。
胸の奥に、ほんの少しだけ、くすぐったい光が灯った。
たこオタくん。お姉さん。女の子。空翔くん。黒瀬くん。
ここに来てくれた子たちの“心”と、向き合ってきた時間。
不安そうな顔も、うつむいた声も、最後にはちょっと笑って帰っていく背中も、全部が浮かんできて。
「……誰かの、小さな一歩を支えられる魔法がいいな。
それって、すごく素敵なことだから。」