魔女とハイエナ令嬢/暗黒ギャング抗争ファンタジー ※掲載休止予定(アカウントが変?)
3
その日、町の参事会(自治議会)で、決意を秘めた参事会員が核心の議題を提出し、数秒の沈黙があったらしい。
「もはや看過しかねる、我々の危機。都市内外のギャングと、その背後にいる魔族と魔王をどうするかということです」
結論から言って、彼は「愚か者」だった。倫理的に正しいかどうかではなく、「処世として賢くなかった」。なぜなら、いわゆる有力者だの、地位を得た者、財を築いた者などは、大部分がギャングや魔族の後援を受けた一味・傀儡であったり、穏便で良心的な者ですら「賢明な妥協」で保身一徹。
議題をぶった切って、小馬鹿にした手拍子と足踏みが流れ出す。それは察した者を伝播して、議会全体を覆い尽くした。
「ポッポ! ポッポ!」
意味不明な掛け声が揃えられる。
つまり議論拒否と、それ以上の発言は容認されないということ。早い話が「不都合なことを言うバカは黙れ」ということ。
「皆さん! 我らボーナは!」
「ポッポ! ポッポ! ポッポ!」
発言者が声を高めると、議員一同はさらに意味不明な掛け声を高めて、手拍子・足踏みを強めて対抗するのだった。彼らは「もののわかった人間」であったから。今こそギャングと魔族の裏からの支配への忠誠心を示すべきときであって、忠勤に励もうと律儀な心を起こしたらしい。
最後に「反魔族」の発言者が「ふざけてるのか!」と怒り狂って絶叫すると、議長は「神聖な参事会の品位を損なう」として退席を命じ、最後には警備員たちによって議場から放り出された。
その参事会員は、帰り道でギャングから五人がかりで三十回刺されて死んだ。誰もが見て見ぬ振りして(家族や親族・友人ですら恐れて手を出せなかった)、野ざらしに捨て置かれた死体はカラスに目玉をつつかれ、ハエがたかった。
もはやボーナでは、普通のやり方で魔族やギャングを駆逐するのは事実上に不可能だった。
4
その日の夕方には、彼以外の一部の他の参事会員の何人かが惨事に見舞われた。
彼らは手拍子・足踏みをしなかったり、他の者らの「ポッポ!」の掛け声の大合唱に参加しなかった者たちだった。反魔族の発言者を擁護しようとした者は最も罪が重かった。(ギャングや魔族の裏からの支配への)忠誠心が欠如して分際をわきまえられない者は重要な地位に就けておくのは危険でもあったし、「一罰百戒」の戒めで反省徹底させるためである。
最悪の犠牲者は、やはり発言を擁護しようとして「静粛に!」と叫んだ「知能障害の屑」もしくは「奇麗事を信じている間抜け」。ギャング十数名で自宅を襲撃され、下腹部からみぞおちまで刃物で切り裂かれて内臓をぶちまける羽目になる。家族たちは顔や体に刃物で傷をつけられ、父や夫である参事会員の屍肉を生のまま食うことを強要されたそうだ。
「舐めとんのか! 誰のお陰で生かしておいてもろとるんや! この犬野郎、そうやって議員になって、無事にやっとれるんは誰のお陰や?」
目は両方とも抉られて、切り落とした男性器を口に詰め込まれ(吐き出せないように唇を釘付けされた)、傷口から流れ出たハラワタを踏みにじられながら、何度も何度もナイフで浅く鋭く斬りつけ、棒や鞭で血塗れで人間とわからなくなるくらいまで痛めつけて虐殺。最後には十歳かそこいらの子供に「刺せ。でなければお前も母ちゃんも殺すぞ」と命じて、自分の父親を刺し殺させた。妻で母親である女は死んでいく夫と我が子の目の前で輪姦されていたし、幼い娘は「一生をかけて世間に恐怖を知らしめる」ため、手の指を全て切り落として鼻と耳を削ぎ落とされた。
それでも不幸中の幸いは防衛軍の戦士団が独断で救出に向かったことで、家族たちは死を免れたし隣人たちは無事だったそうだ。もっとも、蹴りまくられた少年は内臓破裂と脳挫傷で、病院で死亡したそうだが。
「いやあ、「摂理」ですねえ」
議会や学問の場ではではそんな言い回しがよく使われ、この事件でも重宝された。つまり魔族の支配やギャングの横暴を「摂理」という言葉で曖昧・無難に表現することによって、解決すべき問題や課題としても認識することを拒否し、保身を完遂する弁論哲学の主流な学派である(そんなのばっかり!)。
彼ら全般の最大の誤算は、とっくに反魔族レジスタンスの狂犬・死神のような輩がボーナに潜入していたことで、これまでの罪を問われたり制裁される可能性が出てきていたことか(軍の強硬派や一部のエルフ・ドワーフの有力者たちもキレはじめていた)。いかに魔族やギャングほど手の込んだ残虐でないにせよ、(犯罪者や魔族シンパや裏切り者たちこそが)殺される怖れが出てきたことに変わりはない。怖いのはもはや魔族だけでないと、まだ気づいていない滑稽な皮肉的状況に陥っていて、まだそれがわかっていないという人間的な無残さがあった。
その日、町の参事会(自治議会)で、決意を秘めた参事会員が核心の議題を提出し、数秒の沈黙があったらしい。
「もはや看過しかねる、我々の危機。都市内外のギャングと、その背後にいる魔族と魔王をどうするかということです」
結論から言って、彼は「愚か者」だった。倫理的に正しいかどうかではなく、「処世として賢くなかった」。なぜなら、いわゆる有力者だの、地位を得た者、財を築いた者などは、大部分がギャングや魔族の後援を受けた一味・傀儡であったり、穏便で良心的な者ですら「賢明な妥協」で保身一徹。
議題をぶった切って、小馬鹿にした手拍子と足踏みが流れ出す。それは察した者を伝播して、議会全体を覆い尽くした。
「ポッポ! ポッポ!」
意味不明な掛け声が揃えられる。
つまり議論拒否と、それ以上の発言は容認されないということ。早い話が「不都合なことを言うバカは黙れ」ということ。
「皆さん! 我らボーナは!」
「ポッポ! ポッポ! ポッポ!」
発言者が声を高めると、議員一同はさらに意味不明な掛け声を高めて、手拍子・足踏みを強めて対抗するのだった。彼らは「もののわかった人間」であったから。今こそギャングと魔族の裏からの支配への忠誠心を示すべきときであって、忠勤に励もうと律儀な心を起こしたらしい。
最後に「反魔族」の発言者が「ふざけてるのか!」と怒り狂って絶叫すると、議長は「神聖な参事会の品位を損なう」として退席を命じ、最後には警備員たちによって議場から放り出された。
その参事会員は、帰り道でギャングから五人がかりで三十回刺されて死んだ。誰もが見て見ぬ振りして(家族や親族・友人ですら恐れて手を出せなかった)、野ざらしに捨て置かれた死体はカラスに目玉をつつかれ、ハエがたかった。
もはやボーナでは、普通のやり方で魔族やギャングを駆逐するのは事実上に不可能だった。
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その日の夕方には、彼以外の一部の他の参事会員の何人かが惨事に見舞われた。
彼らは手拍子・足踏みをしなかったり、他の者らの「ポッポ!」の掛け声の大合唱に参加しなかった者たちだった。反魔族の発言者を擁護しようとした者は最も罪が重かった。(ギャングや魔族の裏からの支配への)忠誠心が欠如して分際をわきまえられない者は重要な地位に就けておくのは危険でもあったし、「一罰百戒」の戒めで反省徹底させるためである。
最悪の犠牲者は、やはり発言を擁護しようとして「静粛に!」と叫んだ「知能障害の屑」もしくは「奇麗事を信じている間抜け」。ギャング十数名で自宅を襲撃され、下腹部からみぞおちまで刃物で切り裂かれて内臓をぶちまける羽目になる。家族たちは顔や体に刃物で傷をつけられ、父や夫である参事会員の屍肉を生のまま食うことを強要されたそうだ。
「舐めとんのか! 誰のお陰で生かしておいてもろとるんや! この犬野郎、そうやって議員になって、無事にやっとれるんは誰のお陰や?」
目は両方とも抉られて、切り落とした男性器を口に詰め込まれ(吐き出せないように唇を釘付けされた)、傷口から流れ出たハラワタを踏みにじられながら、何度も何度もナイフで浅く鋭く斬りつけ、棒や鞭で血塗れで人間とわからなくなるくらいまで痛めつけて虐殺。最後には十歳かそこいらの子供に「刺せ。でなければお前も母ちゃんも殺すぞ」と命じて、自分の父親を刺し殺させた。妻で母親である女は死んでいく夫と我が子の目の前で輪姦されていたし、幼い娘は「一生をかけて世間に恐怖を知らしめる」ため、手の指を全て切り落として鼻と耳を削ぎ落とされた。
それでも不幸中の幸いは防衛軍の戦士団が独断で救出に向かったことで、家族たちは死を免れたし隣人たちは無事だったそうだ。もっとも、蹴りまくられた少年は内臓破裂と脳挫傷で、病院で死亡したそうだが。
「いやあ、「摂理」ですねえ」
議会や学問の場ではではそんな言い回しがよく使われ、この事件でも重宝された。つまり魔族の支配やギャングの横暴を「摂理」という言葉で曖昧・無難に表現することによって、解決すべき問題や課題としても認識することを拒否し、保身を完遂する弁論哲学の主流な学派である(そんなのばっかり!)。
彼ら全般の最大の誤算は、とっくに反魔族レジスタンスの狂犬・死神のような輩がボーナに潜入していたことで、これまでの罪を問われたり制裁される可能性が出てきていたことか(軍の強硬派や一部のエルフ・ドワーフの有力者たちもキレはじめていた)。いかに魔族やギャングほど手の込んだ残虐でないにせよ、(犯罪者や魔族シンパや裏切り者たちこそが)殺される怖れが出てきたことに変わりはない。怖いのはもはや魔族だけでないと、まだ気づいていない滑稽な皮肉的状況に陥っていて、まだそれがわかっていないという人間的な無残さがあった。