魔女とハイエナ令嬢/暗黒ギャング抗争ファンタジー ※掲載休止予定(アカウントが変?)
6
サコンたちがロドリゲス獄長と、ハイエナ監獄の観光をはじめたころ、中庭の一角ではハイエナ娘たちの「慰問ショー」が行われていた。
「よっし、いくぞ!」
キラン・レイレイは上着を脱ぎ捨て、短いタンクトップ肌着になる。ズボンを脱ぎ捨てて、短いフリルスカートだけを残して。
「キランさん、ほんとにやるんですか?」
「あたぼーよ」
「でも、だけどぉ」
新人の娘が怖じ気づく。
距離があるとはいえ、周囲の鉄格子の回廊からはギャングの凶悪犯や変質者たちが見物しているのだった。「飢えた獣欲」の波動と瘴気じみたオーラ、忌まわしい汚れた衝動をみなぎらせている。歓声には卑猥な言葉と病んだラブコールが混じっていたし、彼女たちの空気と匂いを嗅いだり舐めたりする仕草したり、拝みだす者や早々にシコりだす者までいる。こちらを凝視しながら男同士で犯しあいしだす奴までいる。
「ビビってたら、やってらんねえよ。喧嘩したら普通の人間の男よりはウチらの方が強いんだから」
「で、でも! この人数はやばいですよぉ」
「大丈夫だって。いざとなったら、兵隊さんたちが鎮圧してくれる。事故になってもしばらく頑張ってれば助けて貰えるから」
彼女たちは獣エルフで、その中でもハイエナ氏族は一番に強い部類だろう。通常の人間やエルフ・ドワーフでは男性の方が腕力があるのだが、ハイエナ氏族では性差での力の優劣は少なく、特徴として氏族の因子は母系で受け継がれて女性中心のグループでもある。
キランは臆しもせずに囚人たちに「プレゼントの時間だ、感謝しろよ」「屑どもめ、ウチらを拝み奉れ!」と手を振っている。飛び跳ねて下着が見えるのもサービスのうちらしい。
一方の新人ハイエナ娘は「ああうう」と怖じ気が抜けきらない。これは精神的な訓練で、入団テストのイニシエーション試験でもある。
「よーし、歌って踊っちゃうぞ!」
キランは手でハートマークを作ってウインクまでして愛嬌を振りまき、あっちこっちに無造作に投げキッス。それから過激な歌詞の歌を大声で歌いながら、腰を揺らして手を振り飛び跳ねる。すさまじい度胸と腹の据わり具合。
後輩の新人もぎこちなくキランに倣う。
しかし新人である彼女はまだ知らない。このあとで「命が惜しくない囚人による痴漢・レイプトライアル」があるということを。どのみち終身刑で一生出られずに過酷な労働と拘禁されているのだから「若い娘の乳でも揉んでそのまま殺される」ことを望む者が出てくるのは理の必然でもある。命がけの闘争、負ければレイプや怪我もしかねない死闘が待ち構えている。
7
「ここが彼女、サリーを拘留していた部屋だ。他のギャングから暗殺される恐れもあったから、証人保護も兼ねてここで軟禁していた。巷で放っておくと、いつの間にか行方不明になったり、死体で発見されてもおかしくなかったから、裁判の間は我々が保護していた」
そこは手狭ではあったけれど、最低限は清潔で採光もある部屋だった。何よりも他の囚人たちとは違う区画で、監獄の職員たちや兵士の詰め所のすぐ近くにある。
送話管まであった。
「これは?」
「獄長室と、見張りの詰め所に話せるようになっている。用事があったりいざ不慮の事態が起きたときに、助けを呼べるように。ここは来客用の部屋に鍵を付けて、仮の勾留室にしていた。今は職員用のチャペル(礼拝室)にしているが」
部屋の片隅には、墓石のような四角い石。
哀れな悔い改めた女、と。
サコンはその前に、持ってきた小さな薔薇の花束を置いた。
「あの女は、なかなかやり手でな。派閥抗争で暗殺なんかもしたし、縄張りもあって、魔王のレオ・クルスニコ侯爵と愛人関係で子供までこさえた。だが縄張りの治安は良かったし、わけのわからない犯罪はさせないか、制裁していたな。麻薬の取引や人身売買もやってはいたが、限度ややり方では苦慮してたみたいだったな。
悪女なりの人望もあったし、町の連中からは慕われてた。他のギャングやワルからはずいぶんと嫌われていたようだが」
獄長の口ぶりは、苦笑するような懐かしむような感じだった。さほど憎んでおらず同情すらもしていたのだろうか。
サコンとしては安堵と寂寥感がこみ上げて、しばらく言葉も出なかった。だがやがて、真実を明かす言葉を口にした。
「俺、サラと婚約していたことがあるんです」
サコンたちがロドリゲス獄長と、ハイエナ監獄の観光をはじめたころ、中庭の一角ではハイエナ娘たちの「慰問ショー」が行われていた。
「よっし、いくぞ!」
キラン・レイレイは上着を脱ぎ捨て、短いタンクトップ肌着になる。ズボンを脱ぎ捨てて、短いフリルスカートだけを残して。
「キランさん、ほんとにやるんですか?」
「あたぼーよ」
「でも、だけどぉ」
新人の娘が怖じ気づく。
距離があるとはいえ、周囲の鉄格子の回廊からはギャングの凶悪犯や変質者たちが見物しているのだった。「飢えた獣欲」の波動と瘴気じみたオーラ、忌まわしい汚れた衝動をみなぎらせている。歓声には卑猥な言葉と病んだラブコールが混じっていたし、彼女たちの空気と匂いを嗅いだり舐めたりする仕草したり、拝みだす者や早々にシコりだす者までいる。こちらを凝視しながら男同士で犯しあいしだす奴までいる。
「ビビってたら、やってらんねえよ。喧嘩したら普通の人間の男よりはウチらの方が強いんだから」
「で、でも! この人数はやばいですよぉ」
「大丈夫だって。いざとなったら、兵隊さんたちが鎮圧してくれる。事故になってもしばらく頑張ってれば助けて貰えるから」
彼女たちは獣エルフで、その中でもハイエナ氏族は一番に強い部類だろう。通常の人間やエルフ・ドワーフでは男性の方が腕力があるのだが、ハイエナ氏族では性差での力の優劣は少なく、特徴として氏族の因子は母系で受け継がれて女性中心のグループでもある。
キランは臆しもせずに囚人たちに「プレゼントの時間だ、感謝しろよ」「屑どもめ、ウチらを拝み奉れ!」と手を振っている。飛び跳ねて下着が見えるのもサービスのうちらしい。
一方の新人ハイエナ娘は「ああうう」と怖じ気が抜けきらない。これは精神的な訓練で、入団テストのイニシエーション試験でもある。
「よーし、歌って踊っちゃうぞ!」
キランは手でハートマークを作ってウインクまでして愛嬌を振りまき、あっちこっちに無造作に投げキッス。それから過激な歌詞の歌を大声で歌いながら、腰を揺らして手を振り飛び跳ねる。すさまじい度胸と腹の据わり具合。
後輩の新人もぎこちなくキランに倣う。
しかし新人である彼女はまだ知らない。このあとで「命が惜しくない囚人による痴漢・レイプトライアル」があるということを。どのみち終身刑で一生出られずに過酷な労働と拘禁されているのだから「若い娘の乳でも揉んでそのまま殺される」ことを望む者が出てくるのは理の必然でもある。命がけの闘争、負ければレイプや怪我もしかねない死闘が待ち構えている。
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「ここが彼女、サリーを拘留していた部屋だ。他のギャングから暗殺される恐れもあったから、証人保護も兼ねてここで軟禁していた。巷で放っておくと、いつの間にか行方不明になったり、死体で発見されてもおかしくなかったから、裁判の間は我々が保護していた」
そこは手狭ではあったけれど、最低限は清潔で採光もある部屋だった。何よりも他の囚人たちとは違う区画で、監獄の職員たちや兵士の詰め所のすぐ近くにある。
送話管まであった。
「これは?」
「獄長室と、見張りの詰め所に話せるようになっている。用事があったりいざ不慮の事態が起きたときに、助けを呼べるように。ここは来客用の部屋に鍵を付けて、仮の勾留室にしていた。今は職員用のチャペル(礼拝室)にしているが」
部屋の片隅には、墓石のような四角い石。
哀れな悔い改めた女、と。
サコンはその前に、持ってきた小さな薔薇の花束を置いた。
「あの女は、なかなかやり手でな。派閥抗争で暗殺なんかもしたし、縄張りもあって、魔王のレオ・クルスニコ侯爵と愛人関係で子供までこさえた。だが縄張りの治安は良かったし、わけのわからない犯罪はさせないか、制裁していたな。麻薬の取引や人身売買もやってはいたが、限度ややり方では苦慮してたみたいだったな。
悪女なりの人望もあったし、町の連中からは慕われてた。他のギャングやワルからはずいぶんと嫌われていたようだが」
獄長の口ぶりは、苦笑するような懐かしむような感じだった。さほど憎んでおらず同情すらもしていたのだろうか。
サコンとしては安堵と寂寥感がこみ上げて、しばらく言葉も出なかった。だがやがて、真実を明かす言葉を口にした。
「俺、サラと婚約していたことがあるんです」