魔女とハイエナ令嬢/暗黒ギャング抗争ファンタジー ※掲載休止予定(アカウントが変?)
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「なるほど。ちょうど良かった。私はエニチェリ商会のセリムだ」
ヒゲを生やしたドワーフ風の若者(おそらく混血なのだろう)が握手を求める。サコンと握手を交わしつつ、ネロスミスを一瞥して「相棒はドワーフなのか」と微笑んだ。ネロスミスは親指を立てて「わかるか? うちのオカンがな」と嬉しそう。
荷馬車に乗せて貰おうと話しかけたら、うまい具合に依頼や打診してきた組織の一つであるエニチェリ商会の人がいた。彼らはこちらの都市ボーナでの人間とエルフ・ドワーフの自治・互助会や自警団のような組織である。ここの関所・往来所に日々の物資の納入に来ていたのだという。
「宿泊所は、こっちで宿屋の空き部屋を一ヶ月ほど用意してある。地区によっては治安崩壊で終わっているから出歩くときは用心することだ。うちのエニチェリ商会の縄張りだったらまだ良いし、何か面倒事があったら言ってくれ。すぐ隣の「アハ団」の女どもは横着でたまに足元見てくることもあるから、注意しろよ」
「アハ団? ずいぶん楽しそうな名前だな。ワライダケでも食って笑い転げるのかい?」
ネロスミスの軽口に、セリムは愉快そうに馬を御しながら答えた。
「楽しい奴らってのは、そうかもな。魔族傘下のギャングとしちゃ、ましな部類ではあるだろうよ。あいつらのケツモチの一つの小クルスニコ子爵殿とは、俺らエニチェリ商会ともボチボチ仲良くやっている。あいつはクルスニコの息子だが、母親や山羊エルフだから人は食わないし、エルフやドワーフと「森番」やってるような大将だ。うちのバヤジット伯とも友人だしな」
セリムは説明しながら、荒れ地に踏み固まった道の彼方の城塞を指差した。
「あれがバヤジット伯の城だ。ドワーフだったら知ってるだろ? あの場所からちょっとは睨みを効かせてくれているから、どうにかこの辺りで荷物運んだり農業もやれるのさ。
あの城では家内工業のタペストリーと武器鍛冶が名産物で、ウチの店でも取り扱ってる」
「おうよ! ブランドものだよな。ほら、オイラの愛用のこいつもバヤジット・ブランドだぜ!」
ネロスミスは荒野の城塞に楽しげに手を振りつつ、荷物からブーメラン・トマホークを示す。
それは「く」「L」字型の手斧で、内側の刃が付いた部分には皮革のカバーが当てられている。刃の二辺の外側寄りに楕円形の穴が二つ開いており、そこが持ち手というわけ。短剣や戦斧のように使えるほかに、投擲するトマホーク(投げ斧)として使えるが、巧みに扱えばブーメランのように軌道を曲げてUターンさせる芸当も可能(ネロスミスは重力操作の魔術能力があるため、併用してコントロールしている)。よく見れば稲妻の刻印が付いており、たしかにバヤジット(稲妻さん)のブランドにふさわしい。
「まともな味方の人らがいるみたいで、なんだか安心したよ。それで、その「アハ団」ってのは?」
荒野の乾燥気味の道を行く荷馬車で、新しい世界への興味と雑談は続く。
セリムは愉快そうに答えて言った。
「やんちゃなあばずれどもさ。アマゾネス・ハイエナ。獣エルフの女どもの婦人会やレディース」
「あー、ハイエナ」
ネロスミスは納得顔でうなずく。サコンの問いかける視線に、驚異の説明をポンと投げた。獣エルフの事情では血縁から詳しい彼だ。
「狼男とかが代表格だけど、さっきの山羊エルフってのも獣エルフの氏族なんだが、「ハイエナ」もいるのさ」
「なんか、物騒な感じなのか?」
「と、思うだろ? ハイエナっつーと、なんかむさくるしい男ばっかりのセコい盗賊みたいな、ちょいワルの三枚目のイメージ。でも、実はあいつらって女系なんだよな。氏族の特徴の遺伝が母親から子供に代々伝わる血筋で、だから構成員も女がメインなんだよ、実は」
「そうなのか? ああ、それでアマゾネス」
「そーゆーこった。でも、奴らのヤバさはそれだけじゃねーんだわ。まず、けっこう凶暴で戦闘力も狼男や狼女と変わらない。
それから、あいつらって女でもティムポが生えてるんだわ。動物のハイエナのビックリ生態と同じだから、それがネーミングと部族のトーテムの由来になっている」
「は?」
サコンはわけがわからず、目が点になった。
ネロスミスは「どうしようもない怪奇現象」でも語るかのようなしたり顔で、肩をすくめた。
「だからよ、奴らは女でもティムポ生えてる。なんか氏族の遺伝で男性的な凶暴性や攻撃性が強くって、そういう性格性質が体の発達にまで影響してつんだとさ。医学的には陰核が肥大してるだけらしいけど、ちゃんとおっ立つんだってよ。
さすがにキンタマまではないけど、股ぐらの脂肪がタマに見えてぱっと見には男と間違うくらい。さすがに子供を産むと変形してようやくはっきり見分けられるそうだけど。
しかも貧乳が多いから、いきってる若い奴らとかはぱっと見は男と間違えるくらい。女だから顔立ちとか綺麗だったり、美少年に見えたり「宝塚暴力団」なんて言い方まである。徒党意識が強くって、お互い同士でアレやったり男いらず、女なのに彼女を作ったり、気に入った男のガキをレイプしたなんて話まで聞くぞ」
「マジ? 冗談言ってからかってないよな?」
「大マジ」
ネロスミスはタスマニアンデビルな面差しで見つめ返す。こいつは冗談好きだが、どうもこの件では真実を語っているらしい。
「なるほど。ちょうど良かった。私はエニチェリ商会のセリムだ」
ヒゲを生やしたドワーフ風の若者(おそらく混血なのだろう)が握手を求める。サコンと握手を交わしつつ、ネロスミスを一瞥して「相棒はドワーフなのか」と微笑んだ。ネロスミスは親指を立てて「わかるか? うちのオカンがな」と嬉しそう。
荷馬車に乗せて貰おうと話しかけたら、うまい具合に依頼や打診してきた組織の一つであるエニチェリ商会の人がいた。彼らはこちらの都市ボーナでの人間とエルフ・ドワーフの自治・互助会や自警団のような組織である。ここの関所・往来所に日々の物資の納入に来ていたのだという。
「宿泊所は、こっちで宿屋の空き部屋を一ヶ月ほど用意してある。地区によっては治安崩壊で終わっているから出歩くときは用心することだ。うちのエニチェリ商会の縄張りだったらまだ良いし、何か面倒事があったら言ってくれ。すぐ隣の「アハ団」の女どもは横着でたまに足元見てくることもあるから、注意しろよ」
「アハ団? ずいぶん楽しそうな名前だな。ワライダケでも食って笑い転げるのかい?」
ネロスミスの軽口に、セリムは愉快そうに馬を御しながら答えた。
「楽しい奴らってのは、そうかもな。魔族傘下のギャングとしちゃ、ましな部類ではあるだろうよ。あいつらのケツモチの一つの小クルスニコ子爵殿とは、俺らエニチェリ商会ともボチボチ仲良くやっている。あいつはクルスニコの息子だが、母親や山羊エルフだから人は食わないし、エルフやドワーフと「森番」やってるような大将だ。うちのバヤジット伯とも友人だしな」
セリムは説明しながら、荒れ地に踏み固まった道の彼方の城塞を指差した。
「あれがバヤジット伯の城だ。ドワーフだったら知ってるだろ? あの場所からちょっとは睨みを効かせてくれているから、どうにかこの辺りで荷物運んだり農業もやれるのさ。
あの城では家内工業のタペストリーと武器鍛冶が名産物で、ウチの店でも取り扱ってる」
「おうよ! ブランドものだよな。ほら、オイラの愛用のこいつもバヤジット・ブランドだぜ!」
ネロスミスは荒野の城塞に楽しげに手を振りつつ、荷物からブーメラン・トマホークを示す。
それは「く」「L」字型の手斧で、内側の刃が付いた部分には皮革のカバーが当てられている。刃の二辺の外側寄りに楕円形の穴が二つ開いており、そこが持ち手というわけ。短剣や戦斧のように使えるほかに、投擲するトマホーク(投げ斧)として使えるが、巧みに扱えばブーメランのように軌道を曲げてUターンさせる芸当も可能(ネロスミスは重力操作の魔術能力があるため、併用してコントロールしている)。よく見れば稲妻の刻印が付いており、たしかにバヤジット(稲妻さん)のブランドにふさわしい。
「まともな味方の人らがいるみたいで、なんだか安心したよ。それで、その「アハ団」ってのは?」
荒野の乾燥気味の道を行く荷馬車で、新しい世界への興味と雑談は続く。
セリムは愉快そうに答えて言った。
「やんちゃなあばずれどもさ。アマゾネス・ハイエナ。獣エルフの女どもの婦人会やレディース」
「あー、ハイエナ」
ネロスミスは納得顔でうなずく。サコンの問いかける視線に、驚異の説明をポンと投げた。獣エルフの事情では血縁から詳しい彼だ。
「狼男とかが代表格だけど、さっきの山羊エルフってのも獣エルフの氏族なんだが、「ハイエナ」もいるのさ」
「なんか、物騒な感じなのか?」
「と、思うだろ? ハイエナっつーと、なんかむさくるしい男ばっかりのセコい盗賊みたいな、ちょいワルの三枚目のイメージ。でも、実はあいつらって女系なんだよな。氏族の特徴の遺伝が母親から子供に代々伝わる血筋で、だから構成員も女がメインなんだよ、実は」
「そうなのか? ああ、それでアマゾネス」
「そーゆーこった。でも、奴らのヤバさはそれだけじゃねーんだわ。まず、けっこう凶暴で戦闘力も狼男や狼女と変わらない。
それから、あいつらって女でもティムポが生えてるんだわ。動物のハイエナのビックリ生態と同じだから、それがネーミングと部族のトーテムの由来になっている」
「は?」
サコンはわけがわからず、目が点になった。
ネロスミスは「どうしようもない怪奇現象」でも語るかのようなしたり顔で、肩をすくめた。
「だからよ、奴らは女でもティムポ生えてる。なんか氏族の遺伝で男性的な凶暴性や攻撃性が強くって、そういう性格性質が体の発達にまで影響してつんだとさ。医学的には陰核が肥大してるだけらしいけど、ちゃんとおっ立つんだってよ。
さすがにキンタマまではないけど、股ぐらの脂肪がタマに見えてぱっと見には男と間違うくらい。さすがに子供を産むと変形してようやくはっきり見分けられるそうだけど。
しかも貧乳が多いから、いきってる若い奴らとかはぱっと見は男と間違えるくらい。女だから顔立ちとか綺麗だったり、美少年に見えたり「宝塚暴力団」なんて言い方まである。徒党意識が強くって、お互い同士でアレやったり男いらず、女なのに彼女を作ったり、気に入った男のガキをレイプしたなんて話まで聞くぞ」
「マジ? 冗談言ってからかってないよな?」
「大マジ」
ネロスミスはタスマニアンデビルな面差しで見つめ返す。こいつは冗談好きだが、どうもこの件では真実を語っているらしい。