紫陽花の憂鬱
「口にあった?」
「うん。これ、美味しい。リピートしたい。」
「じゃあストック買ってってお願いしなきゃだね。」
「お願いは日向くんにお願いしたいな。その方が通りやすいと思うし。」
「そう?梅原さんが言っても通ると思うけど。」
日向は誰とでも仲が良く、好かれるタイプだ。少し気難しい人にも臆さず話すし、通したい希望と相手の要望を上手く調整しながら通すことでも有名で、そういう芸当はどちらかと言えば笑うのが苦手な紫月には到底無理なものだった。
「日向くんはなんか…いつも笑ってて、気遣いができてすごいね。…だから営業にいけるわけだけど。私は全然、気遣いがだめ、みたいで。」
ぽつりと落ちた、抱えていていた憂鬱。甘かったはずの口の中に残る酸味がやけに残って、それをうやむやにしたくて紫月は再びカップに口をつけた。
「そう…かなぁ。梅原さんも周りに気を遣って仕事してると思うけど。」
「仕事は、そうだね。…できてないとまずくない?」
「それもそうか。それで、なんで泣いたかの続き、聞かせて?」
日向の声は不思議だった。さっきまで紫月の中にあった迷いをそのまま引っ張り上げてくれるような温かさのある問いかけに、紫月は手の中にあるマグカップを見つめたまま、ぽつりと言葉を落とし始めた。
「…泣くほど傷ついたのかって言われたらなんか、そこもよくわからないんだけどね。…って、そんなこと言ったら軽蔑されちゃうかな。」
日向に軽蔑されたら、きっと傷つく。マグカップから視線を上げ、ゆっくりと日向に焦点を合わせる。日向は、紫月が使っていたデスクを背にして紫月の右側に立っていた。
「軽蔑なんかしない。だからゆっくり話してよ。わからないことは、まぁ…俺の方が多分頭は良くないけど、一生懸命考えるから。」
その言葉に安心して、紫月は微笑んだ。さっきよりも切なさが薄まったように見えて、日向も少し安心する。
「うん。これ、美味しい。リピートしたい。」
「じゃあストック買ってってお願いしなきゃだね。」
「お願いは日向くんにお願いしたいな。その方が通りやすいと思うし。」
「そう?梅原さんが言っても通ると思うけど。」
日向は誰とでも仲が良く、好かれるタイプだ。少し気難しい人にも臆さず話すし、通したい希望と相手の要望を上手く調整しながら通すことでも有名で、そういう芸当はどちらかと言えば笑うのが苦手な紫月には到底無理なものだった。
「日向くんはなんか…いつも笑ってて、気遣いができてすごいね。…だから営業にいけるわけだけど。私は全然、気遣いがだめ、みたいで。」
ぽつりと落ちた、抱えていていた憂鬱。甘かったはずの口の中に残る酸味がやけに残って、それをうやむやにしたくて紫月は再びカップに口をつけた。
「そう…かなぁ。梅原さんも周りに気を遣って仕事してると思うけど。」
「仕事は、そうだね。…できてないとまずくない?」
「それもそうか。それで、なんで泣いたかの続き、聞かせて?」
日向の声は不思議だった。さっきまで紫月の中にあった迷いをそのまま引っ張り上げてくれるような温かさのある問いかけに、紫月は手の中にあるマグカップを見つめたまま、ぽつりと言葉を落とし始めた。
「…泣くほど傷ついたのかって言われたらなんか、そこもよくわからないんだけどね。…って、そんなこと言ったら軽蔑されちゃうかな。」
日向に軽蔑されたら、きっと傷つく。マグカップから視線を上げ、ゆっくりと日向に焦点を合わせる。日向は、紫月が使っていたデスクを背にして紫月の右側に立っていた。
「軽蔑なんかしない。だからゆっくり話してよ。わからないことは、まぁ…俺の方が多分頭は良くないけど、一生懸命考えるから。」
その言葉に安心して、紫月は微笑んだ。さっきよりも切なさが薄まったように見えて、日向も少し安心する。