双子王子の継母になりまして ~嫌われ悪女ですが、そんなことより義息子たちが可愛すぎて困ります~3
1、双子王子たちの誕生パーティ
準備に明け暮れている間に、いよいよ明日が誕生パーティとなった。
本番を控えたロベールとマルセルは、朝から大広間で予行練習を一生懸命やり遂げる。
すべての段取りをおさらいしたふたりに、私は小さく拍手した。
「すごいわ。ふたりとも、完璧ね。よくがんばったわ、お疲れ様」
ふたりは嬉しそうに顔を見合わせる。
「おわったぞ、マルセル!」
「やっとおわったな、ロベール」
ロベールが銀髪をサラサラと揺らした。
「母上、わたし、じょうずでしたか?」
マルセルも青い瞳を輝かせる。
「わたしだって、じょうずですよね?」
生まれた時から一緒にいるせいか、ロベールもマルセルもとにかく自分ができたことを主張する。そうやって張り合う様子ですらかわいらしく、私はふたりの前に膝をつき、小さな手をそれぞれ右手と左手で握った。
「ロベールもマルセルも、とってもとっても上手でした。よく頑張りましたね」
ふたりの顔がパアッと明るくなった。
「はい!」
「わあい!」
はしゃいだ声で飛びつくので、慌てて両手で抱き抱える。ふたりは私の腕の中で得意げに笑った。
「わたし、がんばりました!」
「わたし、じょうずでした!」
キラキラした瞳がまっすぐ向けられて、胸がいっぱいになる。
思わず、抱きしめる手に力が入った。
「あとは明日を待つばかりね」
肩も、背中も、こんなに小さいのに、大人でも疲れるような日課をこなしているのだ。せめてその頑張りを受け止めてあげたい。
そう思っていると、聞き覚えのある声が背後から響き渡った。
「なんだか仲よしだな?」
振り返ると、この国で一番輝いている人が入り口からこちらに向かってくる。
「父上!」
「どうしたんですか?」
喜んで駆け寄るふたりを、ルイゾン様もかがみ込んで抱きしめた。
「明日が本番だろう? 様子を見に来た」
私は誇らしげに告げる。
「ご安心ください。ふたりとも、とても上手に口上を述べられるようになったんですよ」
ルイゾン様が驚いたようにふたりを見た。
「あの長ったらしいやつをか? それはすごいな」
ロベールとマルセルはルイゾン様に褒められて、さらに嬉しそうだ。
「すごいです!」
「がんばりました!」
立ち上がったルイゾン様は、思い出したように付け足した。
「……まあ、万一、忘れてしまっても大丈夫だ。父上がいいことを教えてやろう」
「なんですか?」
「いいこと、しりたいです!」
――なにかしら?
興味を惹かれた私も、立ち上がって成り行きを見守る。
ルイゾン様は不敵な笑みを浮かべた。
「いいか? これから先、お前たちが人前でしゃべる機会はたくさんある。嫌になるほどある。うんざりするほどある。慣れることもあれば、気が乗らない時もあるだろう」
――そ、そんなこと言っていいの?
赤裸々な話にハラハラしたが、ルイゾン様は続ける。
「うまくしゃべれることもあれば、イマイチな時もある。覚えた内容を忘れることもあるだろう。絶対にある。なぜなら完璧なんてあり得ないからだ。だけど心配するな」
ルイゾン様は胸を張った。
「なにを言うのか忘れてしまった時は、こうすればいい」
胸を張ったルイゾン様は、足を少し開いて、顎を上げる。
それだけで王者の風格が漂った。
そばにいる者を思わず平伏させる雰囲気を醸し出す。
思わず息を呑んだ。
ロベールとマルセルも、目が離せない様子だ。
それらを確認したルイゾン様は、ふっといつもの微笑みを浮かべる。
周囲の緊張が一気に和らいだ。
「わかったか? 話す内容を忘れた時は――」
ルイゾン様は種明かしをするように、ふたりに向かって言った。
「――場の空気を支配してから、思いつくことをなんでも言えばいい。そうすれば、口上を忘れてもなんとかなる」
「そうなのですか?」
思わず問い返したのは私だ。ルイゾン様は頷く。
「大体のことはこれでなんとかなった。大事なのは焦らないことだ」
ロベールとマルセルは、ルイゾン様の言葉を胸に刻み込んだ様子で繰り返した。
「……だいたいのことはこれでなんとかなる」
「だいじなのはあせらないこと……」
幼いなりに感じ入るところがあったのだろう。人の上に立つと決められているというのはこういうことなのだ。
――お飾りの王妃である私が同じように振る舞うのは無理かもしれないけれど。
せめて足を引っ張ることがないようにしたいと思った私は、質問を重ねた。