男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
2年間封印されていた己の格好悪すぎる過去が新たに掘り返されて私は心の中で悶絶した。
お陰で胸のドキドキは治まったけれど、情けないやら恥ずかしいやらですぐそこにある整った顔を直視することが出来なかった。
赤面どころじゃない、全身赤くなっている気がして今が夜で本当に良かったと思った。
「それに、飛んでしまえばいつものように重さは感じなくなるだろう」
「そ、そうだな。まずはちょっと浮いてみるか」
「ああ」
目をつむり、なんとか無理やり集中する。
( 浮け )
すると、いつものようにちゃんと身体が浮き上がる感覚がした。
ラディスが自分の足元を見下ろし満足そうに頷く。
「問題なさそうだな」
「じゃあ、このまま飛ぶよ」
「ああ」
そして、私たちはいつもとは大分違う格好で夜空へと飛び上がったのだった。