男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女は騎士団長に愛される 6


「いつもながら見事だな」
「え?」

 声の方を向くとラディスの顔がやっぱり近くて慌てて私は視線を前に戻した。

(近過ぎだって!)

 夜空は綺麗なのに、いつものようにそれを楽しむ余裕が無かった。

「この力だ」
「あ、ああ」
「この力を皆に見せてやれたらな」
「え!?」

 まさかの台詞に流石にびっくりする。

「そうすれば、あの女が偽物だと皆信じるはずだ」
「あ、ああ。そういうことか」

 余程例の聖女様に対して苛ついている様子だ。

「そうだ、訊きたいと思ってたんだ。やっぱりあの聖女様も私みたいな不思議な力を持っているのか?」
「だから、聖女様はお前だろう」
「あ、つい癖で」

 苦笑して、そういえばと訊く。

「あの子、名前は?」
「フェリーツィアだ。偽名かもしれんがな」
「フェリーツィア……」

 聖女フェリーツィア。
 なんて聖女様らしい綺麗な響きの名前だろう。

「お前ほどではないが、奇跡の力は一応持っているようだ。俺は見ていないがな。王はその力を見て聖女に間違いないと」
「へぇ、どんなことをしたんだろう」
「一瞬のうちに花を咲かせたとか」
「へぇ!」

 これまたなんて聖女様らしい綺麗な奇跡だろう。
 あの子にぴったりだ。
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