男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女はドジを踏む 5


(どうしよう……)

 ザフィーリが去った後、私はその場でひとり頭を抱えていた。

 オレも一緒に行く、と寸前まで出かかったが、そうなると私も外出届けを提出しなければならなくなる。
 それはきっと団長にも伝わってしまうはずだ。
 ……それにしても。

(まさかザフィーリがあんなに積極的な奴だったなんて……)


「妹に会ってどうするつもりだよ」

 去り際に訊くと、奴はさらっと答えたのだ。

「無論、交際を申し込むつもりだ」
「!?」

 度肝を抜かれるとはこのことだ。

「で、でもあいつ、確かもう心に決めた人がいるとか言ってた気がするけどなぁ」

 早々に諦めさせようとそう言ってもみたけれど、ザフィーリはショックを受けるどころか、ふんと鼻で笑った。

「だからなんだと言うんだい。可能性がゼロでない限り、僕は彼女に会えたこの奇跡を、運命を信じる」

 ……それ以上はもう何も言えなくなってしまった。


(てか、昨夜ちょっと顔を合わせただけだぞ!? いきなり交際申し込むとかありえないだろ!?)

 悪いが答えはノーに決まっている。
 メガネをかけてちゃんと見てみたら全然思ってたのと違った、となる可能性だって大いにある。それに……。

(一応、心に決めた人がいるってのは本当だし……)

 ラディスの顔が頭に浮かんで、私はぶんぶんと顔を横に振った。

 ……今はあいつのことを考えている場合じゃない。
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