男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
と、その顔がこちらを向いた。
「そういえば、さっき何か言われていたな」
「え? ああ、愛想のない子だけどよろしく頼むって」
にぃと笑って言うと、ラディスは目を丸くしてから恥ずかしそうに再び前を向いた。
「まったく、いつまで経っても子供扱いだ」
「あはは。……そういえば、ラディスって今何歳なんだ?」
「俺か? 24だ」
「24!?」
思わず大きな声が出てしまった。
てっきりもう30近いと思っていた。
(じゃあ、初めて出会ったときはまだ22だったってことか)
するとラディスは眉を寄せた。
「一体何歳だと思っていたんだ」
「いや、ほら、団長なんてやってるし、もっと上だと思ってた」
するとラディスは息を吐いた。
「だからあまり歳のことは言わないようにしている。それで見下す輩もいるからな」
「そういうもんか?」
「そういうものだ。お前は今19だったか」
「ああ、もうすぐ20歳」
(そっか、もっと離れているかと思ったけど、5歳差なんだ)
向こうの世界だったら、大学生と社会人になりたてくらいのカップルということだ。
普通にありだなと思っていると。
「はじめ見たときは14かそこらだと思った」
「は!?」
「あのときは泣いていたから余計に幼く見えたんだ。そう怒るな」
低く唸っていると、ラディスは話を変えるように言った。
「それより、ヴィオーラから面白い話を聞いたぞ」
「面白い話?」
「隣国バラノスに聖女が現れたそうだ」
「えっ!?」
ぎょっとしてその顔を見ると、ラディスは挑戦的な笑みを浮かべていた。
「やはり、なんらかの陰謀が絡んでいるとみて間違いなさそうだ」
私はごくりと喉を鳴らした。