男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女と新たな不安 2


 小高い丘の上に聳える城へと続く街道の外れに、ラディスの愛馬イェラーキは繋がれていた。

「イェラーキ、待たせたな」

 イェラーキはラディスを見ると待ってましたとばかりに前足で何度も地面をかいて鼻を鳴らした。

「イェラーキ、私もまた乗せてくれるか?」

 私がお願いすると返事をするように頭を上下に振ってくれた。
 ラディスはイェラーキの首を撫ぜた後、慣れた様子でひょいとその背に跨り私を見下ろした。

「乗馬訓練はまだだったな」

 頷くと、手が差し出された。

「引っ張り上げてやるから、(あぶみ)に足をひっかけて上がってこい」
「わ、わかった」

 その手を取り、少しの緊張を覚える。
 鐙まで結構高い。うまく乗れるだろうか。

「無理そうなら、また下から持ち上げてやろうか?」
「大丈夫だ!」

 2年前のことを揶揄われたのだとわかり私はムッとしてその手をぐっと強く握り締めた。
 ラディスが「行くぞ」と言って引っ張り上げてくれたタイミングに合わせ片足を鐙にひっかけながら勢いよくイェラーキの背に跨る。

(出来た!)

 一気に視線が高くなって、このカッコいい馬にまた乗れたことに興奮を覚える。
 どうだと得意になって後ろを振り向くと、ラディスは口を押さえ肩を震わせた。

「な、なに笑ってんだよ!」
「いや、すまん。ちゃんと乗れて良かったな」

 なんだか馬鹿にされた気がして、私はふんと前に向き直りイェラーキの鬣を撫ぜた。

「よろしくな、イェラーキ」
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