男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
(向こうの友達も、こっちで出来た友達も、どっちも同じくらい大切なんだから選ぶなんて出来るわけないよな)
なぜかこの異世界に来てしまった私。
いつ帰れるのかも、いつまでここに居られるのかも全くわからない。
でも、わからないことで悩むのは時間の無駄な気がしてきた。
だったら、この世界にいられる奇跡のような時間を悔いなく楽しんだ方が絶対にいいに決まっている。
(あ。でも例の聖女の本には帰り方が書いてあるのかな)
その書物がこの城のどこかに本当にあるのなら、やっぱり読んでみたい。
もしそれに帰り方が書いてあったなら、それから自分がどうしたいのか改めて考えればいい。
(今度、ラディスに訊いてみよう)
騎士団長の彼なら、その秘密の書庫の場所を知っているかもしれない。
そうと決めたら漸く気持ちが落ち着いて、また眠気がやってきた。
朝が来れば、また大好きな馬の世話が私を待っている。睡眠は出来るだけしっかりとっておかなければ。
今度は、嫌な夢は見ずに済みそうだった。