男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女と魔女 1
それからしばらくは平穏な日々が続いた。
ラディスは忙しいのか、それとも私のあまり話しかけないで欲しいという言葉を気にしているのだろうか、あれきり会っていなかったし姿を見ることもなかった。
全く寂しくないと言ったら嘘になるけれど、私は最近始まった乗馬訓練のお陰で毎日ヘトヘトになっていた。
心配していたお尻の痛みについてはトーラの姿で姿勢を気をつけていれば大分楽だとわかったが、普段使わない筋肉を使うせいか毎朝全身が悲鳴を上げ起き上がるのに一苦労だった。
それにラディスが言っていた通り、馬への飛び乗りにも大分苦戦していた。
あのチンピラ風の奴らは、そんな私を見てゲラゲラ笑ったりと相変わらずムカツク態度をとっていたが、この間のようなあからさまな嫌がらせはしてこなくなった。
そんな、ある夜のことだ。
「キアノス副長が倒れた?」
私が聞き返すと、向かいに座るイリアスが深刻そうな顔で頷いた。