男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
まさかと振り返り、私は目を剥いた。
「ラっ、だ、団長!?」
ラディスが怖い顔でこちらを見下ろしていた。
「話がある。ついて来い」
「は、はい!」
食堂中の視線を感じながら、しかし有無を言わせない圧を感じて私は立ち上がった。
そしてさっさと先を行くラディスに焦ってついて行く。
皆の前で呼び出すとか何考えてんだよと文句が出なかったのは、ラディスの切羽詰まったような雰囲気と、先ほどの嫌な予感があったからだ。
そして案の定、食堂を出てすぐにラディスは口を開いた。
「キアノスが倒れた」
「聞きました。大丈夫なんですか?」
誰が聞いているかわからないので念の為敬語で訊ねる。
すると、ラディスは前を向いたまま小さく答えた。
「……あまり大丈夫ではない」
「!?」
「だからお前を呼んだ。おそらく、お前にしか治せない」
「え……?」
――私にしか治せない……?