男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

 そして辿り着いたのはキアノス副長の部屋だった。
 ラディスはノックもせずにその部屋の扉を開けると私を招き入れた。
 その暗い部屋はラディスの部屋とほぼ同じ広さで机とソファがあり、奥にベッドが置かれていた。
 瞬間、誰もいないように思えたが、ベッドの枕元に置かれた蝋燭の灯りに照らされ彼の金髪が見えた。

「キアノス副長……?」

 眠っているのか、私たちが部屋に入っても何も反応がない。
 ラディスは扉を閉めるとかちりと鍵をかけた。
 彼の後についてベッドに横になるキアノス副長の姿を間近で見て、私は息を呑んだ。

 顔色は青白く頬はこけ、まるで別人のようにやつれたその姿にショックを受ける。
 イリアスは疲れている様子だったと言っていたけれど、こんな酷い状態だとは思わなかった。
 あまりに静かで一瞬息をしてないのではないかと不安になったが、ゆっくりと胸が上下していて少しほっとする。
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