男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「なんで、こんな……」
「倒れたのは今日の夕刻だ。それから急速に悪化している」
「え?」
「おそらく、これは呪いだ」
「呪い?」
隣に立つラディスが憎々し気に続ける。
「呪いは、『魔女』が最も得意とする術だ」
「!」
驚くと同時に、やっぱりと思ってしまった。
先ほど食堂で「聖女様」の名が出て、もしやと考えてしまった。
だって彼女、フェリーツィアは最近キアノス副長にべったりだと聞いていたから。
「気付けなかった、俺の落ち度だ」
悔しそうに、ラディスが強く拳を握るのを見た。
「本当なら、こうなっていたのは俺の方だったのかもしれん」
「!」
――そうだ。元々彼女は団長であるラディスの傍にいた。
だからラディスはキアノス副長がこうなったのは自分のせいだと責任を感じているのだ。
そして、彼は縋るような真剣な目を私に向けた。
「頼む。キアノスを助けてやって欲しい」
断る理由なんかない。
私は力強く頷く。
「やってみる」