男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
一気に顔の熱が上がって、こんなときにやめてくれと思ったがラディスは怒ったような、いや、とても不安そうな顔をしていて何も言えなかった。
そのまま彼は私を運びソファに寝かせてくれた。
「とにかく少し休め」
「わかった……」
責任を感じているラディスを見てなんとかしたいと思ったのに、今度は私が心配をかけてしまった。
(情けない……)
せめて平気だというところを見せたくて、私は笑顔で話しかける。
「でも、副長が治って本当に良かったよ」
「ああ。お前がいてくれて本当に助かった。……しかし、すまなかったな」
「え?」
「緊急事態とは言え、皆の前で……」
「あ、ああ」
……そうだ。皆の前で声を掛けられたことを思い出してしまった。
食堂にはあのチンピラ風な奴らもいたかもしれないのに。
(イリアスもめちゃくちゃ驚いてたな……)
ぽかんとした友人の顔を思い浮かべながら私は苦笑する。