男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女と魔女 5


「考えと言うほどではないが……今日とある情報を入手してな」

(情報?)

 というと、また女将さん情報だろうか。
 ラディスがキアノス副長に訊いた。

「お前、あの女から何かもらわなかったか?」
「え?」
「あれが魔女なら、呪いの媒体があるはずだ。最近、あいつから何か渡されなかったか? 例えば、いつも身に着けておくような」

 途端、キアノス副長の顔が強張るのがわかった。

「あるんだな!?」

 副長は重く頷いた。

「……数日前に、お守りだとサシェをもらったけれど」
「!」

 サシェ。確か香り袋のことだ。
 昔まだ施設に居た頃に皆で作った覚えがある。巾着袋にドライフラワーやハーブなどを入れて口を留めるだけだが、香りが結構強くて酔いそうになったことを思い出した。

「今どこにある」
「制服の、内ポケットに」
「制服は」
「ええと、多分クローゼットの中だと……」

 突然倒れたというから、ここまで副長を運んだ誰かが仕舞ったのかもしれない。
 ラディスがクローゼットに向かい扉を開け放った。
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