男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「これですか?」
「そう。それだよ」
キアノス副長に見せると彼は神妙な顔で頷いた。
ラディスが心配そうに私を見た。
「大丈夫か」
「うん、特には何も……」
でも気味が悪いので、すぐに傍にあったチェストの上に乗せた。
流石に中身の確認までする勇気はなかった。
「もしかしたらコイツはもう役目を終えて力は残っていないのかもしれないな」
「……マズイな」
そのとき、キアノス副長が小さく呟くのが聞こえて私たちは揃って視線を向けた。
「彼女、他の騎士仲間にもそれを配っていたよ。いつもお疲れ様ですと言って」
それを聞いて私は息を呑んだ。
(てことは、他にも呪いの被害者がいるかもしれないってこと?)
ラディスも顔色を変えた。
「誰に渡していたか覚えているか!?」
「その場にいた何人かは覚えているけど、流石に全員は把握していないよ。私の見ていないところで配っているかもしれないし」