男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
2年前、私がこの世界に来てすぐに一度勃発した隣国バラノスとの小規模な争いでも奴は大活躍したそうだ。
その功績を称えられ、今の騎士団長の座に着いたのだと聞いている。
そんな奴がだ。
まさか、そんなくだらない理由で私を呼び出すわけがない。
それよりも私が恐れているのは。
(まさか、私の正体がバレた?)
そんなはずはないと思いながらも、嫌な予感がした。
もしバレていた場合、何を言われるのだろう。
(聖女として名乗りをあげろ?)
その力には頼らないと言っていたけれど、忠誠を誓っている国王の困り様を見て流石に黙っていられなくなったのだろうか……?
――そんなことをアレコレ考えているうちに結構な時間が経っていたようで。
「いつまでそこにいる気だ」
「!」
そんな苛ついた声が扉の向こうから聞こえてきてビクッと両肩が上がってしまった。
……気配で気づかれていたみたいだ。いつからだろう。恥ずかしいったらない。
「早く入れ」
「……失礼します」
一度大きく深呼吸をしてから、私は目の前の両開きの扉を開いた。