男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

 騎士団長の部屋は思っていたより狭かった。
 勝手に豪華絢爛な部屋を想像していたが意外と質素で物もそんなに置いていない。

(それでも私たちの部屋よりは広いな)

 そしてこの部屋の主であるラディスは正面にある机の向こうに座っていた。
 書き物の最中だったのか、私が扉を閉め背筋を伸ばし気をつけの姿勢で立つと奴はペンを置きこちらに視線をやった。

「……」
「……」

 そのまま、ただじっと見つめられて顔が引きつる。

「……なんのご用でしょうか?」

 訊くと、奴は漸く口を開いた。

「それはこちらの台詞だな」
「は?」

 ……どういう意味だろうか。
 そっちが呼んだくせに。

「お前は何のために此処にいる」
「ええと……?」
「なぜ騎士になる道を選んだんだ」
「そ、それは」

 質問の意図がわからずに戸惑っていると、その緑の目がすっと細められた。

「一体何を企んでいる。……聖女よ」

 ざわっと全身が総毛立った。

(やっぱり、バレてる……!?)


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