男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「騎士を狙い、国の戦力を削ぐのがあいつの目的なのだとしたら、もうあいつはその役目を終えたんだからな」
――『騎士』を狙い……?
それを聞いて、ざわりと総毛立った。
「俺はあの女の部屋を見てくる。キアノス、もう動けるようならそのサシェを受け取っていた者を当たってくれないか」
「わかった。寝てなんかいられないよ」
そうしてキアノス副長はすぐにベッドから立ち上がった。
そんな彼に私は訊く。
ドクドクと騒ぐ胸を押さえながら。
「あの、騎士って、もしかして、イリアスも……?」
「!?」
ラディスが私を振り返った。
「え? どうだったかな……私が受け取ったときには彼はいなかったと思うけど」
「――わ、私、訊いてくる!」
駆け足で扉に向かおうとして、ぱしっとその腕をとられた。
「!?」
ラディスが真剣な目をしていた。
「落ち着け。その姿のままで行く気か」
「あ……」
そうだ。まだ藤花の姿のままだった。
「俺もあの女の部屋を確認したあとすぐに合流する。もしお前の仲間に呪いにかかった者がいたとしても、ひとりでなんとかしようとするな。俺が行くのを待て。絶対だ」
「わ、わかった」
私はこくりと頷いてから、トーラの姿に変身しキアノス副長の部屋を飛び出した。
(イリアス、どうか無事でいてくれよ……!)