男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女と魔女 6
つい先程まで食堂で一緒だったイリアスを思い出す。
普通に元気そうだったし、きっと大丈夫のはずだ。
もしサシェを受け取っていたら、ワケを話して捨てろと言えばいい。
私が聖女だとは言えないが、彼女が魔女だという話はもうしても構わないはずだ。
食堂と部屋どちらに行こうか迷って、先ずはここから近い食堂に駆け込んだ。
食堂にはもうちらほらとしか人は残っておらず、先ほど座っていた席にイリアスはいなかった。
私のトレーもなくなっていて、きっとイリアスが片付けてくれたのだろう。
結局夕飯はほとんど食べ損ねてしまったが、今はそれどころではない。
部屋の方に行こうと思ったそのときだ。
「君の分はさっきイリアスが部屋に持っていったようだよ」
「ザフィーリ」
入口近くのテーブルで彼がひとり静かに食事をとっていた。
そして私は彼も騎士だということを思い出し、慌ててそのテーブルに駆け寄った。
「ザフィーリ!」
「なんだい。血相を変えて」
「お前、最近聖女様から何かもらわなかったか!?」
「は?」
「サシェとか、なんかお守りだとか言って」
怪訝そうに眉を潜め、彼は首を振った。
「いや、何ももらっていないけどね」
それを聞いてホッとする。
「な、ならいいんだ」
「なんだい。今度は聖女様からの贈り物で揉めているのかい? 全く、君らも飽きないね」
「違うんだよ!」
思わずテーブルにバンっと手をつき大きな声を上げていた。