男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

 ザフィーリが驚いたように料理を口に運ぶ手を止めた。

「それが実は呪いで! そのせいで今日キアノス副長が倒れたんだ!」
「……どういうことだい?」

 一応少し声を潜めて、私は続ける。

「彼女は聖女なんかじゃない。魔女だったんだ」
「君は……自分が何を言っているのかわかっているのかい」

 その顔が不愉快そうに歪む。
 すぐには信じられないだろう。当然だ。でも私は彼を真剣に見つめ続ける。

「今、団長と副長が動いてる。多分、もう彼女は城にいない。彼女の狙いは騎士だ。副長はなんとか助かったけど、もし他にもそのサシェを受け取った奴がいたら、そいつの命が危ないんだ!」

 私の真剣さが伝わったのだろう。徐々にザフィーリの顔色が変わっていくのがわかった。

「ザフィーリ、誰かが彼女から何か受け取っているところを見たとか、最近急に元気がなくなった奴とか騎士の中にいないか?」
「いや、僕の周りには……」

 首を振りかけた彼が、ピタリと動きを止めた。

「そういえば少し前に、イリアスが聖女様と話しているのを見かけたけれど」
「!?」

 ゾワッと全身に鳥肌が立った。
 私はすぐさま踵を返し走り出そうとして。

「待て!」
「え?」
「僕も一緒に行くよ」

 そう言って、彼はトレーを持って立ち上がった。

「君が嘘をついているようには見えないし、ゆっくり食事をしている場合ではなさそうだ」

 急いで返却口へと向かう彼の背中に、私は「ありがとう」とお礼を言った。
 そして、私はザフィーリと共に自室へと急いだ。


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