男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
私がこの世界にやってきたのは2年前。高校2年生のときだ。
突然だった。
剣道部の朝練に向かっている途中、唐突に酷い目眩に襲われ私はその場に座り込んだ。
次に目を開けた時にはもう、目の前の風景が一変していた。
コンクリートジャングルが、本物の緑のジャングルに変わっていたのだ。
夢を見ているのかと思った。
手にしていたはずのバッグやスマホなどは一切持っておらず、まさに着の身着のままの状態で私は深い森の中にひとり座り込んでいた。
幸い、しばらく彷徨っているうちに道に出た。
この道を行けばきっと人に会えるはずだと私はひたすらその道を歩いた。
しかし運悪く、最初に出会ったのは野盗たちだった。
一目でヤバイ奴らだとわかり私は逃げた。
逃げて、逃げて、間一髪のところを助けてくれたのは、馬に乗った男の人だった。
彼は強かった。長い剣を使い、すぐに野盗たちを追い払ってくれた。
地べたに座り込む私を見下ろし、彼は訝しげに訊ねた。
「どこの村の者だ」
「……?」
どう答えていいのか、わからなかった。
助けてくれたその人の格好も普通ではなかったからだ。
彼は、まるで映画やゲームの中から飛び出してきたかのような西洋風の甲冑を身に纏っていた。