男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
おそらく体当たりで開けようとしているのだろう。
すぐにもう一度、部屋が揺れるような大きな音がして背後に視線をやった。――その一瞬の隙を突かれた。
「ぅぐっ!?」
気付けば目前にいたイリアスに首を鷲掴みにされた。
そのまま凄まじい力で宙に持ち上げられたかと思うとモノのように放り投げられた。
「――っ!」
投げられた先は彼のベッドだった。
背中を強く打ち付け息がうまく出来ず喘いでいると、イリアスは私の上に馬乗りになってきてもう一度私の首に手を掛けた。
「く……、イリ、ア……スっ」
苦しい。痛い。苦しい……っ!
私を見下ろす友人の目にはなんの感情も映っていなかった。
ギリギリと容赦なく首に食い込んでくるその両手に、視界が霞んでくる。
(……両手?)
イリアスの両手が今私の首にかかっていることに気付いた私は、彼の胸ポケットに震える手を伸ばす。
なんとか手探りで見つけた小袋をポケットから取り出すとそれを握りつぶしながら私は強く願う。
( 呪いよ、今すぐ消えてなくなれ……! )
「――っぐ、あああああぁぁーー!!」
イリアスが絶叫を上げた。