男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女と魔女 8
イリアスの手から解放され私は激しく咳き込みながら、涙目で彼を見上げる。
「うあっ、ぐぅうああ……っ!」
頭を抱え悶え苦しんでいる彼の腿に手を当て、私は目を瞑り再び集中する。
( 呪いよ、消えろ! )
イメージの中で彼に渦巻く黒煙に触れながら強く、祈るように念じる。
「――っ!?」
するとイリアスの身体は一度硬直し、ガクンっと糸が切れたようにそのまま私の上に倒れ込んできた。
「イリアス……?」
私の胸の上でぴくりとも動かない友人に一瞬最悪な事態を思い浮かべるが、少しして規則正しい呼吸音が聞こえてきて、ふぅと息を吐く。
――なんとかなったみたいだ。
ドカッ! とそのとき凄まじい音と共に部屋の扉が開かれた。
「藤花……っ!?」
ラディスは、ベッドの上の私たちを見て大きく目を見開いた。
「ラディス……」
力が抜けてこの体勢から動けそうにないが、私は彼を安心させるように微笑む。
するとラディスは大股で部屋の中に入ってくると私の上のイリアスの首根っこを掴んでポイっと床に投げ捨てた。
「あっ!」
「あっ、じゃない! お前は何をやっているんだ!」
怒鳴られながらベッドから起こされそのまま強く抱きしめられた。