男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女は騎士見習い 5


 深い緑に見つめられ、だらだらと冷や汗が出てくるのを感じた。

 ――なんで。

 聖女の変身の力は完璧のはず。
 同室のイリアスにだって一年共同生活をしていてバレていないのに、一体なんで。

「……なんのことでしょうか?」

 一先ず、しらばっくれることにする。

 ……まだバレたと決まったわけじゃない。
 今や国を挙げて聖女探しをしているのだ。例の噂もある。
 男女問わず怪しい人物全員に鎌をかけている可能性だってある。

「聖女って、オレは見ての通り男ですが?」
「……確かに、どう見ても男だな」
「ですよね? なのに聖女って」
「だから、何を企んでいるのかと訊いている」

 冷たい視線を受けて、汗ばんだ手を握る。

(どうする? このまま白を切るか?)

「企むって……オレは団長も御存知の通り、騎士になるため日々努力しているだけですが」

 はぁ、とラディスは大きな溜息を吐いた。
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