男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
そうして、言われるままに私は急ぎ正装に着替え、ド緊張で玉座の間の扉の前に立った。
(まさか騎士になる前にこんな格好をすると思わなかったな)
騎士の皆の格好とはまた少し違うデザインだが、ピシっと身が引き締まる思いがした。
それに正直テンションが上がった。
見た目パッとしないトーラでも、なんだかイケメンに見えた。
あのフェリーツィアが着ていたような綺麗なドレスにも憧れるけれど、やはり私はこういうカッコいい服装に惹かれる。
「大丈夫だ。何かあれば俺がフォローする」
「わ、わかった」
緊張が伝わったのだろう、前に立つラディスがそう言ってくれて私は頷く。
そんな私を見て、ラディスの隣にいるキアノス副長が笑顔で続けた。
「大丈夫だよ。何も取って食われるわけじゃない。多分ね」
「えっ」
「キアノス」
そんな彼をひと睨みして、ラディスは前を向き直った。
「行くぞ」
「はい!」
王様に直接お会いするのは勿論これが初めてだ。
騎士の競技会などで遠目に見たことはあるけれど、確か30代半ば程のまだ若い王様だ。
緊張はするけれど、私の正体を知っているラディスとキアノス副長が傍にいてくれるのは心強かった。
玉座の間の扉が開かれると、まず赤く長い絨毯が見えた。
そしてその向こう、煌びやかな玉座には王冠を被り立派な髭を蓄えた男性が座っていた。
(あの方が、この国の王様……)