男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
男装聖女の初任務 1
「キアノス、お前どういうつもりだ」
玉座の間を出て私がホッと一息ついていると、ラディスがキアノス副長を睨みつけていた。
副長はふっと笑ってから歩き出した。
「丁度いいだろう? 君は傍でトーラを守れるし。城のことは私に任せてデートがてら行っておいでよ」
(でっ……!?)
危うく変な声を上げてしまうところだった。
「キアノス……」
「まあそれは半分冗談だとして、君だってこうなることを考えていたんじゃないのかい?」
するとラディスは口を噤んだ。どうやら図星らしい。
副長が小声で続ける。
「トーラを危険な目に遭わせたくない気持ちはわかるけど、誰かは行かなくちゃならないんだ。それには確かにトーラは適任だ」
そうして副長は私の方を見た。
聖女の私が適任だと彼は言っているのだ。
「それに、バラノスの件もあるだろう?」
「バラノスの?」
気になって訊くと副長は頷き答えてくれた。
「バラノスの戦力が落ちている今、戦を仕掛けようという話が持ち上がってね」
「そんな……っ」