男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「見事なものだな」
「……いつから気付いてたんだ? 私だって」
「お前が見習いとして入って来た時だ」
(最初っからかよ!)
そこで私はハっとする。
もし最初から気付いていたのだとしたら。
「まさか私の正体を知ってて、わざと昇級試験落としてたのか!?」
「それはない。単にお前が未熟だからだ」
「……あ、そう」
それはそれでショックで肩を落とす。
「お前の剣には妙な癖がある」
「え?」
「幼い頃から剣術を習っていたと言ったな」
「あ、ああ。一応、向こうじゃ結構強い方だったんだ」
負け惜しみにしか聞こえないが言うと奴は続けた。
「基本は出来ている。体幹もしっかりしている」
「え……」
――まさか、今、褒められた?
あの冷徹騎士団長が、褒めた?
私がぽかんと口を開けていると彼は続けた。
「だが俺たち騎士の扱う剣とは違う。お前のそれは人を殺さない剣だ」
どきりとする。
それは、薄々感じていた。