男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

男装聖女は秘密を共有する 1


「俺もその力で共に飛ぶことは出来ないだろうか」

 もう一度問われて私は若干戸惑いながら答える。

「えっと、いや、試したことがないから……」

 ひとりで飛ぶのはもう慣れたものだが、誰かにこの力を使ったことはないからわからない。

(というか、聖女の力には頼らないんじゃなかったのかよ)

 そうツッコミたかったが言える雰囲気ではなかった。
 と、ラディスは徐に席を立った。そのままゆっくりとした足取りでこちらにやってくる。

「な、なに?」

 元の女の姿で目の前に立たれると、やっぱりデカいと感じる。多分190以上あるんじゃないだろうか。
 ちなみに私がこの異世界にやってくる前、高2の健康診断で計ったときは確か165だった。
 男になると少し身長が伸びるらしく、それでも170ちょい。
 こいつの場合、その上体格もがっちりしているから正直かなりの圧があった。

「なら試してみよう」
「えっ」

 すっと右手が差し出されて、私はその手と奴の顔とを交互に見た。

「手を取れば共に飛べないか?」
「あ、あぁ」

 そういうことかと私はラディスの手をおずおずと握った。……大きくて硬い手だ。
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