男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
……窓の外はまだ暗い。
ダフニさんが例の書物を持ってきてくれるという夜明けまでまだ大分時間がある。
寝るわけにはいかないし、単純に暇を持て余していた私は続けて彼女に質問した。
「彼は魔女みたいな力は持ってないんだよな」
「はい。フヌーディは幼い頃に戦から逃れこの森に迷い込んだところをおばば様に助けられました。それから丁度同じ年だった私たちと兄弟のように育ったのです」
「へぇ」
だからお互いあんなに好き放題言い合えるのかと納得する。
そのときフレージアがふっと笑った。
「私たちも魔女ではないのですよ」
「え?」
「『魔女』とは外の人間が勝手につけた呼び名。私たちはこの力を聖女様から受け継いだ聖なる力だと考えています」
そういえば、フェリーツィアも自分のことを「一応魔女」という言い方をしていた。
「そうか。ごめん」
慌てて謝ると、フレージアは今度はおかしそうにクスクスと笑った。
「いえ、聖女様に謝っていただくことでは」
「そ、そうか」
そんな笑い方も実に聖女様らしい。
「あー、さっきフェリーツィアにもお願いしたんだけどさ、オレのことは藤花って呼んで欲しい」
「藤花様」
「藤花でいいって」
聖女様と呼ばれるのも恥ずかしいが、藤花様呼びもなんだかムズムズする。