男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

 小さく息を吐いて、私はゆっくりと答えていく。

「最初は、城にあるっていう聖女の本が目当てだったんだ。とにかく元いた世界に早く帰りたくて。……でも、仲間たちと一緒に騎士を目指してるうちに、いつの間にか本気で騎士になりたいと思うようになってた」

 騎士見習いとして寮に入ってから一年と少し。
 仲間たちと共に目標に向かって一直線の生活が、部活の延長のようで私にとってはとても心地よかったのだ。

「そうでしたか」
「でも……」

 視線を落とす。

「でも、そんな軽い気持ちじゃダメだったんだよな」
「え?」
「そこの彼やダフニさんに言われた言葉がさ、こう胸にグサっと来たって言うか……正直、自信なくなっちまった」

 ハハと苦笑しながら顔を上げる。

「だからさ、さっきも言ったけど、もし帰る方法がわかったら改めて今後についてちゃんと考えるつもり」

 と、フレージアが真剣な目をこちらに向けていた。

「私たちとしては、やはり藤花にはこのサクラ村に残って欲しいです」
「そ、それは……」

 コンっ、とそのとき背後で小さく音がした。

(……え?)

 続けてもう一度、背中を預けている扉にコツンと何かが当たる音。

 サーッと血の気が引いていく。

(どっちか、気が付いたのか……!?)


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