男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「気がついたのか?」
片耳を扉につけると、少しこもった声が返ってきた。
「ああ」
その低い声はラディスのものだ。
(ラディス……)
息が詰まる。
先ほどの会話を聞かれてしまっただろうか。
私の迷いを、知られてしまっただろうか。
だとしたら。
――彼に、失望されたかもしれない。
「ここは?」
短くそう問われ、私は動揺を隠しつつ小さく答える。
「フェリーツィアの家だ。身体はなんともないか?」
「お前こそ、大丈夫なのか?」
「!」
こんな状況でも私の心配をしてくれるラディスに胸がギュッと苦しくなる。
(全部、私のせいなのに)
「ごめん。こんなことになって……」
声が震えてしまいそうになるのを必死に堪えながら謝る。
すると。
「お前が無事ならそれでいい」
すぐに返ってきたそんな言葉に私は唇を噛んだ。
「ごめん……もう少しだけ待っていて欲しい」
夜が明けて、例の書物の内容が確認出来たらすぐに解放して――。
「藤花」
酷く穏やかな声で名を呼ばれた。