男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

(ってか、なんだよ『宿についたら覚えていろ』って。もうそういう意味にしか聞こえないじゃないか!)

 いや、きっと、おそらく、十中八九、そういう意味なのだろう。
 私だって子供じゃないのだ。そのくらいわかっている。

 ……嫌ではない。

 嫌ではないのだ。

 ラディスのことは好きだし、愛されているのもわかるし、大切に想われて素直に嬉しい。
 そんな彼のいるこの世界で私は生きていくことに決めたのだ。
 この間のように怒りに任せて、というわけでもない。
 拒む理由は、何もない。

 ……でも。

 イェラーキを馬小屋に繋いでいる彼の横顔をチラ見する。
 次いでその鍛えられた二の腕を見て、前にあの腕に抱きしめられたこと、そして温もりを思い出してしまった。

(やっぱ恥ずかし過ぎて無理!!)

 想像するだけで顔が熱くなってきて私はすぐさま彼から視線を逸らした。

 出来るならば今すぐに逃げ出したい。
 なんとかラディスと同室を回避できないだろうか。

(――そ、そうだ。前回とは部屋割りを変えませんかと先輩たちに提案してみようか)
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