男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される
「お前は俺と来い。話があると言ったろう」
「……わ、わかりました」
逃げられないとわかり小さく頷くと、彼はさっさと宿の扉を開け中へと入っていってしまった。
「な、なんか、大丈夫か?」
心配そうな友人に一瞬そのままついて行きたい衝動に駆られるが、私は笑顔で手を振った。
「ん、大丈夫。お前もあんま飲み過ぎんなよ」
「お、おう」
ちらちらとこちらを振り返りつつも先輩方について行くイリアスを見送り、私は溜息一つ吐いて宿の中へと入った。
(そうだ、トーラのままでいれば……!)
ラディスの後について階段を上りながら、私の頭はまだ往生際悪く回避ルートを探していた。
でもついこの間トーラの姿で押し倒されたことを思い出す。
(だ、ダメだ。あいつ、男でもお前はお前だみたいなこと言ってたし……)
前を行くラディスが足を止めたのはこの間と同じ一番奥の角部屋だった。